東武鉄道デハ1とモニ1473
Feb 1, 2018.
東武鉄道は日光街道(≒国道四号線)沿いに千住(せんじゅ)＝久喜(くき)間を1899年(明治37年)に非電化で開業させます。この路線が東武鉄道初の路線で要するに伊勢崎線の基本(原型？)ですが順次延伸し、大正末期の1924年(大正13年)に浅草(あさくさ)＝西新井(にしあらい)間を電化したのを皮切りに、1925年(大正14年)には越谷(こしがや)まで、1926年(大正15年・昭和元年)には久喜まで、、、と電化区間を延伸して行きます。
東武鉄道デハ1型はこの伊勢崎線の電化最初期に、西新井まで電化した際に製造した木造電車で丸妻・正面五枚窓の如何にも東武的な電車です。この時の型番はデハ1型で車番もデハ1から始まって八輛製造されたデハ1型はデハ1からデハ8まであった筈ですから単純明快ですが、翌年にはデハ2型とクハ1型が製造されます。これ以降は型式記号はデハ1、デハ2、デハ3と数字を増やし、クハ1、クハ2、クハ3と数字を増やし、車番はこのような型式に無関係に連番にして行きます。
上の写真の車輛は東武鉄道デハ1型デハ五号。2025年(令和7年)9月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
だからデハ1型はデハ1、デハ2、デハ3と車番の数字が増えて行くのは良いとして、デハ2型の一号車はデハ9、デハ2型の二号車はデハ10、デハ11、デハ12、、、と車番の数字が増えて行きます。結果としてデハ二号はデハ2型ではなくデハ1型で、車番の数字だけ見てもどの型式なのか判らない、南海の古い電車の「電1型」「電2型」とやっているのと同じで混乱は必至でしょうなぁ。以下に写真をお目に掛ける車輛は1924年(大正13年)に西新井まで電化した際に製造されたデハ1型のデハ五号と、1929年(昭和4年)に製造されたクハニ2型のクハニ2九号を改造を重ねて荷物電車化したモニ1473の二輛です。「クハニ29」と聴いても普通にはクハニ20型？とは想像したとしても、「クハニ2型」とは想像できないでしょうなぁ。「へっ、クハニだけで30輛近くも作ったの？」と混乱するのが精一杯でしょうか？。
東武鉄道デハ1型デハ五号(モハ1101)
Oct 1, 2025.
東武鉄道デハ1型デハ五号は上述の通り、伊勢崎線の電化に備え1924年(大正13年)に日本車輛で製造された16m級・両運転台の電車です。未だ、日本国内では電車製造の技術が発展段階であったために使用する部品はアメリカ製のものが数多く使用されています。この辺りは、アメリカ好きの非国民である私の琴線に触れるものがあると言いますか。私、祖父・祖母・叔母が「空襲」の際にアメリカ軍に殺害されているためにアメリカと言う国自体は大嫌いなんですが、アメリカの鉄道は大好きなので、、、まぁ、勝手な理屈です(^^;)。
まず、モーターはウエスチングハウス製で、端子電圧が750Vの際に定格出力が74.6kWとなるモノを使っています。数字が半端ですが、これは馬力表示の出力をキロワット表示に換算したからなのであって、74.6÷0.75＝99.46666、、、要するに100馬力のモーターを四基装備していると言う事です。当初の運行区間である初代の浅草＝西新井間にそれ程極端な急こう配がある訳ではありませんから、普通の電車を普通に走らせるには充分な性能なんだと思います。ましてや電化したのはごく僅かな距離でしかありませんが、館林・伊勢崎方面から直通して来る長距離列車は蒸気機関車が牽引してそのままやって来させれば済む事なので、デハ1型(デハ五号)の一党は区間運転用・近距離用と割り切ればで、この程度の性能でも全く支障なく使用できたのだと思われます。
上の写真の車輛は東武鉄道デハ1型デハ五号。正面五枚窓、ダブルルーフ、ウェスチングハウス製の電装品、ブリル台車装着、とまぁ、私的には堪えられない車輛です。2012年(平成24年)6月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
上の写真の車輛は東武鉄道デハ1型デハ五号。2025年(令和7年)9月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
東武鉄道デハ1型デハ5のパンタグラフ周辺。横型碍子が如何にも東武らしくて良い雰囲気を醸し出しています。2008年(平成20年)10月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
上の写真は東武鉄道デハ1型デハ五号の車内、流石に東武鉄道と言えども区間運転前提として製造されたからなのか車内はロングシートです。カメラの手振れ補正機能に期待して、シャッター速度を1/3秒にして撮影してみましたが、、、イマイチです。2025年(令和7年)9月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
上の写真は東武鉄道デハ1型デハ五号の運転台周辺。2012年(平成24年)6月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
上の写真は東武鉄道デハ1型デハ五号の運転台周辺。やや左側にある太い角パイプのようなモノは、マスコンとブレーキ操作部が一体化しているウエスチングハウス製のコントロール器機？です。ディック・カー製(デッカー製)のこの種の機器を見る機会は多いですが、ウエスチングハウス製の装置は日本国内では見る機会はかなり少なそうな、貴重な存在です。2012年(平成24年)6月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
東武鉄道デハ1型デハ五号の床下です。ターンバックル付きの床下を持つ木造車の床下機器の展示としては、最良のモノの一つだと思います。これに匹敵するものは、鉄道博物館のコトク5010(所謂“開拓使号”)がある程度でしょうか、日本国内には。2008年(平成20年)8月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
東武鉄道デハ5の履いている台車です、、、要するに、ブリル27MCB台車ですね。製造時期を考えると、恐らくはコピーではなくて、ブリル製そのものだと思います。余り台車の本質とは関係ありませんが、この写真はISO-6400、絞りf5.6、シャッタースピード1/20秒で撮影しています。2025年(令和7年)9月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
これもデハ5の履いている台車ですが、上の写真と同じ台車を反対側から撮影しています。但し、撮影はかなり古くて、キヤノンの「パワーショットA650IS」と言う古いコンデジでの撮影です。この写真はISO-800、絞りf2.8、シャッタースピード1/13秒で撮影しています。コンデジとは言っても、キヤノンのAシリーズ最上位機なので実態としてはGシリーズと大差ありません。簡単に言ってしまえば、縮小してホームページ用とかに使う限りではデジイチの普及価格帯機種とほぼ差はつきません。2008年(平成20年)8月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
上の写真と違う台車と言うか、東武博物館の入り口からは遠い場所に在る方の台車を撮影しています。こんな写真が撮れるのは、フリーアングル液晶があってこそと言えます。2008年(平成20年)10月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
東武鉄道デハ1型(デハ五号)の履いている台車を、車輛の真正面側から撮影したものです。東武博物館の入り口とは反対側から撮影しています。2008年(平成20年)10月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
上の写真は東武鉄道デハ1型デハ五号の説明看板、広角レンズにコンバージョンレンズを取り付けて(些か無理な)撮影をしているので、少々樽型に歪曲してしまいました。2025年(令和7年)9月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
上の写真は東武鉄道デハ1型デハ五号の車内。写真の女性はアイドル歌手の森口こころさん。。2025年(令和7年)9月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
上の写真は東武鉄道デハ1型デハ五号の出入り口付近。この写真は運転台寄りと言うか、東武博物館の入り口に近い方のドア付近で撮影しています。手動扉だからなのか、車輛の外側から施錠できるようにしてあります。写真の女性はアイドル歌手の森口こころさん。2025年(令和7年)9月、東武博物館(とうぶはくぶつかん：東京都墨田区)にて撮影。
東武鉄道モニ1473(クハニ2型クハニ2九号)
Oct 1, 2025.
東武鉄道モニ1473は電化初期の1929年(昭和4年)に製造されたクハニ2型のクハニ2九号を電装した際に荷物室を撤去してデハ化し、後に荷物電車に改造、更に除籍後に入換機械として使用されていた車輛です。下の写真を撮影したのは2001年(平成13年)ですが、この時点で実際に車輛には「型式：入換機」と記載されています。いわゆる32系の典型的な車輛です。この系列の車輛は大部分が車体更新されて三扉両開きの3000系に改造されてしまっていますから、かなり原型に近い状態で残存していた貴重な存在でした。
デハ1型デハ五号の箇所にも記載しましたが、初期の東武鉄道の電車は型式番号と車番の数字は不揃いです。型式番号の方はデハ1、デハ2、デハ3、、、と番号順に名付けられていますが、車番はこれとは別に連番で附番されていますからクハニ「2」型なのにクハニ「29」号となっています。クハニ2型はこの時期としては大量に増備されていて総勢二十五輛を数えますが、間違っても二十九輛製造されたと言うことではありません。
東武鉄道には純粋な荷物電車はあっても電動貨車はなかったようで、電動貨車と称する荷物電車が大半だった東急とは少々対照的です。東武鉄道ほどの大鉄道だったら電動貨車が居てもおかしくはないと思うのですが、巨大な鉄道であって貨物輸送も盛んであったために荷物電車はあっても貨車を電車化する必要はなかったようです。台車は住友金属製の「KS31L」と言う、鋳造台枠＋外側イコライザの、如何にもインターアーバン的な外観の格好の良いモノを使用しています。
上の写真の車輛は東武鉄道モニ1473。2001年(平成13年)8月、東武鉄道西新井工場(にしあらいこうじょう：東京都足立区)にて撮影。
上の写真の車輛は東武鉄道モニ1473。2001年(平成13年)8月、東武鉄道西新井工場(にしあらいこうじょう：東京都足立区)にて撮影。
1枚目の写真とは反対側(浅草側)の妻面。ご覧の通り、こちらは貫通路がありますが、元来が片運転台だったクハニを改造したために両端の妻板で外観形状が揃わなかったようです。同じモニ1470型でもモハを出自とするモニ1471とモニ1472は、両妻面とも非貫通で前後が揃っていたようです。
この写真を撮影したのは、嘗ての西新井工場で伊勢崎線の西新井(にしあらい)駅と梅島(うめじま)駅の途中に在った車輛研修施設です。振り出しは西新井電車区だったと思いますが、以前は旧型車の車体更新(≒載せ換え)を軒並み西新井工場で行っていたように記憶しています。西新井工場は杉戸工場と一緒に、南栗橋工場へ集約・移転するような形でこの写真を撮影した数年後に移転し、廃止されています。