豊橋鉄道田口線について
Feb 1, 2025.
豊橋鉄道の路線は鉄道線である渥美電気鉄道を出自とする渥美線(あつみせん：鉄道線)と、豊橋電気軌道を出自とする東田本線(あずまだほんせん：軌道線)がありますが、これ以外にも田口鉄道を出自とする田口線(たぐちせん：鉄道線)が嘗て存在しました。国鉄飯田線南部を構成していた豊川鉄道・鳳来寺鉄道と共に最終的には名鉄グループに入っていた企業です。飯田線の四社である伊奈電気鉄道・三信鉄道・鳳来寺鉄道・豊川鉄道は戦時買収されますが、買収から漏れた田口線は後に豊橋鉄道に編入されます。
歴史的な流れとしては「田口鉄道→豊橋鉄道」となる訳で、国鉄だった事はありません。その割には国鉄との拘わりが強いのは、一時的に国鉄が運行管理を受託していた事があったり、飯田線の快速電車が豊橋から直通してきたことなどの背景があります。因みに、1956年(昭和31年)9月30日までが「田口鉄道」、1956年(昭和31年)10月1日からは「豊橋鉄道田口線」です。
上の写真の車輛は豊橋鉄道モハ14。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。元来は鳳来寺鉄道がモハ10、豊川鉄道がモハ11～モハ15を所有していた内の、豊川鉄道のモハ14・モハ15を引き取った車輛です。田口線が廃止になった際にモハ15は解体されたものの、モハ14は静態保存されていて今日に至ります。1925年(大正14年)に日本車輛で製造された木造車で、後にニセスチール化されます。
モハ10型(と言うかモハ14・モハ15)の車体寸法は長さ15392mm×幅2714mm×高さ4217mm、差h量重量は29.5t、70馬力(≒94kW)のモーターを4基装備しています。大正末期の木造2軸ボギーの電車としてはごく普通の数値でしょう。
これ以外に田口鉄道には自社発注・川造型電車のモハ36～モハ38、箱型電関のデキ53がいましたから車輛番号の下1桁は社内連番にしてあるようです。序でに書くと豊川鉄道にはデキ53と同型のデキ52がいましたので、鳳来寺鉄道・豊川鉄道・田口鉄道のグループ内部でも「グループ内連番？」としてあるようです。
上の写真の車輛は豊橋鉄道モハ14。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。サボの「清崎」の文字の横にカッコ付きで「三河田口」と書いてありますが、水害で不通になっていた頃のサボを想定しているのではないかと思います。恐らくは電車は清崎までしか行かないけれども、清崎駅には代行バスが待っていて三河田口駅まで乗り継いで行けると言う意味なのでしょう。
上の写真の車輛は豊橋鉄道モハ14。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。こちらは特に注釈が付かないパンタグラフ側ですが、行き先は省略されて「田口」です。
上の写真の車輛は豊橋鉄道モハ14。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。窓配置はF3-1D33D33D1、大正期の電車らしく小窓が多い窓配置です。
上の写真の車輛は豊橋鉄道モハ14。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
上の写真の車輛は豊橋鉄道モハ14。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて俯瞰気味に撮影。道の駅したら自体は国道275号線沿いに敷地が在るのですが、モハ14は敷地の中の国道側に置かれています。建物はモハ14を挟んで奥側に建てられており、「奥三河郷土館」と「道の駅したらの本館？」に別れています。この両者を繋ぐ渡り廊下のような構造物があるので、その廊下上から撮影しています。展望デッキとかではないので些か撮影には不向きですが、、、。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)のパンタグラフ周辺を運転台側から撮影。如何にも私鉄的な小柄な一枚シューの可愛らしい菱形パンタグラフが使用されています。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)のパンタグラフ周辺、こちらは運転台とは反対側から撮影。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)のベンチレータ、「半ガラ」とでも呼ぶべきような形状をしています。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)の車内。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。普通のロングシートで、片側は田口線の遺品の展示場になっています。少々判り難いですが、ロングシート下には普通に座席暖房が設置されていますが、かなり奥行きが狭いです。普通の国鉄の電車とかを基準に考えると、ちょっと驚きます。特筆すべきは天井の形状で、車内から見た限りではどう見てもこの車輛はダブルルーフです。床板が奇妙な感じになっているのは、展示中の痛みを避けるためにスノコを敷いているからです。現役当時にこの状態で使っていた訳ではないと思います。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)の座席のひじ掛け。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。座席両端のひじ掛けは位置によって形状が明確に異なります。中央扉附近のひじ掛けは単なる斜め切り落としみたいになっていますが、両端部の扉横のひじ掛けは、微妙にルーター加工でもしたような形状になっています。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)の車内の仕切り。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。乗務員室は明確に独立していて、両側ともにこのような形状になっています。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)の運転室内部。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)の運転室内部、マスコンはディック・カー製(所謂“デッカー”製)です。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)の室内灯、車内天井にはグローブが五個設置されており、個々のグローブ内にはこのように白熱電球？が仕込んであります。想像ですがグローブ一個辺りに100W電球が二個と40W電球が一個装着されていて、100W電球が通常照明用で一輛辺り合計10個、減光時点灯用が40W電球合計五個。この想像で、あっていますかな？。白熱灯照明のグローブなんて、高校時代に通学で乗っていた南武線のクモハ11＋クハ16以来ですが、あちらは車体が少々長いのでグローブが七個とか六個で照明機器の設置台数が多いです。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)が履くTR14型台車、、、の筈なんですが、この系列の台車はどうも苦手です。「明治＊＊年型」と言われてもさっぱり判別できません。だからと言って最近のボルスタレス台車に詳しい訳でもなんでもないですけど。結局私は「甘いモノと電車が好き」と言う程度の知識の止まったままで生涯を終わる事になりそうです。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
上の写真は豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)が履くTR14型台車ですが、この台車で最も注目すべき点は恐らくは此処です。陽刻が残っているの、判りますかねぇ。台車最上部のI型鋼の、軸箱の斜め上辺りに陽刻があります。何故か上下逆になるように組み立てているので、これを上下反転させているのが下の写真です。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)が履くTR14型台車に残る「8/86 SEITETSUSHO YAWATA」の陽刻。「8/86」って、「1886年(明治19年)8月」の事でしょうか？。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)の主抵抗器、少々面白い場所に取り付けてあります。ケース入りの抵抗器が4つですが、パンタグラフ側の台車の直後に、横方向(線路に対して直角方向)です。2025年(令和7年)1月、道の駅したら(愛知県北設楽郡設楽町)にて撮影。
モハ10型の履歴
Feb 1, 2025.
些か大雑把ですが、モハ10型の履歴は下記の通りです。全車輛が飯田線グループ各社の車輛と一緒に買収されたはずですが、モハ10型一統は国鉄車番を貰っていません。16m級木造車ですから、買収した国鉄としても早い時期に処分するつもりだったのではないかと思われます。
- 鳳来寺鉄道モハ10→大井川鉄道モハ201
- 豊川鉄道モハ11→他社に譲渡せず解体
- 豊川鉄道モハ12→他社に譲渡せず解体
- 豊川鉄道モハ13→大井川鉄道モハ202
- 豊川鉄道モハ14→田口鉄道モハ14→豊橋鉄道モ14
- 豊川鉄道モハ15→田口鉄道モハ15→豊橋鉄道モ15
道の駅したら
Feb 1, 2025.
このコンテンツで散々引き合いに出している豊橋鉄道モハ14(≒田口鉄道モハ14)が静態保存されているのは「道の駅したら」で、住所は「愛知県北設楽郡設楽町大字清崎小字中田17-7」です。「大字」「小字」の表示は記載しなくても間違いではありませんが、無駄に几帳面に書くとこのようになります。
ネット上の記述で住所が「北設楽郡設楽町大字田口小字アラコ14番地」となっているモノがありますが、それは情報が古く移転前の住所です。元々は設楽町の町役場の近くに静態保存されていたものが2021年(令和3年)5月13日に現在の住所に移転開業しており、その際に「道の駅したら」も含めた一群の施設が開業しています。なんとなく想像は付くと思いますが、移転前の場所は三河田口駅の近く、移転後の現在の場所は清崎駅の近くです。
上の写真は「道の駅したら」のロゴ、2025年(令和7年)1月撮影。
上の写真は「道の駅したら」全景、2025年(令和7年)1月撮影。左端に在る茶色っぽい物体がこのコンテンツの主人公であるモハ14です。超極めて大雑把に言えば、田口線の清崎駅を背中にするような位置から撮影しています。この写真、キヤノンの広角ズームレンズでの撮影で、焦点距離11mm(ライカ判換算で18mm程度の画角)で撮影しています。敷地の広さに救われて、この程度のレンズでも難なくコマ内に収まっています。
上の写真は奥三河地域の観光案内図、2025年(令和7年)1月撮影。道の駅の建物内に掲出されていたモノを撮影してみました。普通にご覧になる分には横幅720ピクセルの「少々大きめの地図」でしかありませんが、画像ファイル自体は横幅1500ピクセル×高さ2250ピクセルなので解像度はそこそこ高めです。「名前を付けてファイルを保存」とかなさって印刷すれば、結構見られる印刷結果が得られる筈です。道の駅したら自体はこの案内地図の中の「左右方向では、中央よりやや左側」「上下方向では、ほぼ中央」と言った辺りに記載されています。田口線の廃線跡が記載されていない点は気に入らないですが(^^;)。
上の写真は道の駅したらの構内図、2025年(令和7年)1月撮影。格好良過ぎてなにがなにやら判然としませんが、中央下側の赤茶色のトーチカみたいな場所にこの構内図が設置されていました。モハ14の国道側妻面に近い辺りです。
田口線の駅一覧
Feb 1, 2025.
| 駅名 | 読み | 住所 | 通算距離 |
|---|---|---|---|
| 本長篠 | ほんながしの | 南設楽郡鳳来町大字具津 | 0.0km |
| 三河大草 | みかわおおくさ | 南設楽郡鳳来町大字富保 | 2.6km |
| 鳳来寺 | ほうらいじ | 南設楽郡鳳来町大字門谷 | 4.8km |
| 玖老勢 | くろぜ | 南設楽郡鳳来町大字玖老勢 | 7.5km |
| 三河大石 | みかわおおいし | 南設楽郡鳳来町大字副川 | 9.1km |
| 三河海老 | みかわえび | 南設楽郡鳳来町大字海老 | 11.6km |
| 滝上 | たきうえ | 南設楽郡鳳来町大字海老 | 12.8km |
| 田峰 | だみね | 北設楽郡設楽町大字田峯 | 15.4km |
| 長原前 | ながらまえ | 北設楽郡設楽町大字清崎 | 17.0km |
| 清崎 | きよさき | 北設楽郡設楽町大字清崎 | 18.1km |
| 三河田口 | みかわたぐち | 北設楽郡設楽町大字田口 | 22.6km |
- 三河海老駅には車庫が在り、車輛の検査標記も「海老工」となっています。「海老工場」と言う事のようです。
- 田峰駅の駅名は「TAMINE」ではなくて「DAMINE(だみね)」です。また、駅名は「田峰」ですが、住所の表示は「田峯」です。
- 他路線との接続は、本長篠で接続する飯田線(≒鳳来寺鉄道)のみです。これ以外の接続路線はありません。
- 南設楽郡鳳来町は、新城(しんしろ)市と合併したために行政地名？としては現存しません。尤も、新城市自体も遡れば南設楽郡新城(しんしろ)町ですけど。