木曽のボールドウィン(赤沢森林鉄道一号機)
Dec 1, 2025.
赤沢森林鉄道のボールドウィン製リアータンク機とほぼ同様な外観の、置戸(おけと)森林鉄道の三号機に関してはこちらに記述してあります(このコンテンツの後半)。
「木曽のボールドウィン」と言う書き方をしましたが、赤沢森林鉄道のボールドウィン(Baldwin)製一号機は、いわゆる木曽森林鉄道出身の車輛であり、現在では赤沢森林鉄道で静態保存されている車輛です。当サイトに写真を上梓してある車輛の中では、置戸(おけと)森林鉄道の三号機とほぼ同等の外観をしている、ボールドウィン製の機関車です。古くから鉄道模型をなさっていた方ならば「つぼみ堂模型の森林鉄道のBタンク」と言った方が判りやすいかもしれません。
「リアータンク機」とも呼ばれますが、それは水タンクがキャブ直後に在るからです。普通のタンク機であれば水タンクはキャブ直前・ボイラーの左右に在りますが、それだけの事であって物凄く変わった構造をしていると言う事ではありません。車軸配置は重量バランスの関係もあって0-4-2となります。タンク機で「従輪があるけれども先輪が無い」と言う車輛は、重量バランスを勘案してそのような車軸配置にする場合が多いようです。
この車体形状のボールドウィンのリアータンク機は、木曽森林鉄道には十輛近くいた筈です。一部はアメリカ本国の鉄道ファンに買い取られて帰国したような話も耳にしますが、静態保存とは言え、木曾森林鉄道に所縁のある場所で綺麗な状態で拝見することが出来るのは、なんとも嬉しい限りです。
上の写真の車輛は赤沢森林鉄道一号機(ボールドウィン製リアタンク機)。2010年(平成22年)9月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。
大体、鉄道好きな男の子たちが外国型車輛に親近感を持つようになる切っ掛けは模型屋さんに置いてある車輛である場合が多いので、ボールドウィン製のこの機関車とカツミのH.K.ポーター製の7100型(＝弁慶号・義経号)、天賞堂のボールドウィン製Cタンク機、カワイモデルの60型辺りが最右翼であるようで、、、私ぐらいの年齢層だと恐らくは似たような切っ掛けだと思うのですけど。ボールドウィン自身はかなり大型機も作っていた機関車メーカーですが、日本に輸入されたボールドウィン機は比較的小柄な車輛が多いように思われます。
このボールドウィン(Baldwin)のリアタンク機、元来が農園などで火力の高い燃料が使えない(使わない)場合を考慮して異常なくらい火室を広くするために従輪を設置した車輛ですから、C62辺りのハドソン機と同じ設計思想で作られた車輛です。どうして火力が高い燃料、要するに石炭を使わない(使えない)のかと言うと、石炭は買って来なければ手に入らないけれど、そこらに落ちている木材の切れ端しを拾ってくるような燃料確保の手法を採っている分には燃料代は最低限に抑えられるからと言う事です。
残念ながら動態ではないのですが、平日でも天候が宜しければ車庫から出て来て撮影し易い場所に留置されますから、撮影に行って空振りになる可能性は極めて少なく、なんとも嬉しい限りです。
上の写真の車輛は赤沢森林鉄道一号機(ボールドウィン製リアタンク機)。2025年(令和7年)10月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。
赤沢森林鉄道のボールドウィン製のリアタンク機の後ろ姿です。極端な増炭改造はしていないので、かなり原型に近い外観だと思われます。ヘッドライトがずらして取り付けてあるのは、限界突破防止、ないしは冬期にツララに当たっての破損予防を考えてか、いずれかではないかと思います。
赤沢森林鉄道一号機の足周り、ちゃんと、サイドロッドが下に降りきった位置に停車してあります。普通は此処までやってくれないんじゃないかな？。並々ならぬ美的センスに脱帽です。油が充分に廻って鉄が鈍く光を放っており、本当に綺麗な足回りをしています。やはりステヘンソン式の車輛っていいですねぇ。2010年(平成22年)9月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。
赤沢森林鉄道一号機の足周りを真横から見た処、油光りしていて本当に綺麗でため息が出ます。2010年(平成22年)9月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。
赤沢森林鉄道一号機の写真を撮影したものですが、恐らくは竣工記念として撮影された「メーカーのカタログに載っている的？な写真」ではないかと思います。因みに製造番号は「60539」です。2025年(令和7年)10月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。この写真自体は森林鉄道乗り場横の記念館の中に掲示されています。
些か苦しい写真で恐縮ですが赤沢森林鉄道一号機のキャブ内、これは焚口周辺と言うかボイラ側です。なにぶんにも「車内立ち入り禁止」の車輛を撮影しているので少々厳しいです。この機関車は雨が降ると記念館(≒車庫)に収納されますので、その際に撮影したものです。2025年(令和7年)10月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。
これも赤沢森林鉄道一号機のキャブ内、こちらは上の写真とは反対側で、石炭庫側を撮影しています。撮影に使ったのは相変わらずですが、
カメラはキヤノンのEOS M6mk2と言うミラーレス機、
レンズはキヤノンのEF-M 11-22mmと言う広角ズームレンズ、
フロントコンバージョンレンズはケンコーのLD-055Wと言う機種です。この組み合わせだと、ほぼ魚眼レンズに近い画角の写真が撮影出来て魚眼歪みがほぼ皆無なので最近愛用しています。2025年(令和7年)10月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。
番外編：置戸森林鉄道三号機
Dec 1, 2025.
北海道の北見営林局管内で運行されていた置戸(おけと)森林鉄道の機関車です。1921年(大正10年)年製で、製造番号が54511となる車輛です。この時期にボールドウィン(Baldwin)が大量に製造したロギング用の機関車で、ボールドウィンとしてのメーカー型番が「6-10 1/3C」となる車輛です。上述の通り、木曽森林鉄道でも同型の機関車が運行されていて赤沢森林鉄道で観光用に静態展示されていますが、赤沢の機関車と、置戸のこの機関車と、同じく北見営林署管内の温根湯(おんねゆ)森林鉄道の機関車と、この三輛が日本国内に現存する「6-10 1/3C」型の全てであるようです。
以下に写真をお目に掛ける置戸の車輛は、群馬県沼田市に在る林野庁林業機械化センター(https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikai/senta_ni_tuite.html)に静態保存されていた機関車の傷みが目立ち始めていたために「よみがえれボールドウィン実行委員会」さんの方々の努力で整備されたものです。使用されなくなってから40年ほど経過していたものですが、見事に修復されていて驚くばかりの美しさになっています。
上の写真の車輛は置戸森林鉄道のボールドウィン製三号機。2008年(平成20年)10月、林野庁林業機械化センター(群馬県沼田市)にて撮影。Baldwin manufacutured class 6-10 1/3C rear tank steam locomotive of Oketo Shinrin Tetsudo(Shinrin Tetsudo means logging railroad) of, Hokkaido, Japan.
上の写真の車輛は置戸森林鉄道のボールドウィン製三号機。2008年(平成20年)10月、林野庁林業機械化センター(群馬県沼田市)にて撮影。Baldwin manufacutured class 6-10 1/3C rear tank steam locomotive of Oketo Shinrin Tetsudo(Shinrin Tetsudo means logging railroad) of, Hokkaido, Japan.
処でこの機関車の「6-10 1/3C」と言う型番の読み解き方の話です。一番最初の“6”は、この機関車の総車輪数を示しています。二番目の“10”はシリンダ直径(いわゆるシリンダボア)で、この機関車の場合は直径254mm(≒10インチ)です。三番目の“1/3”はどう調べても意味が判らなかったので取り敢えずは降参しておくとして、四番目の“C”は二動軸のB型機と言うことです。どう言う訳なのかこの文字が“D”になると三動軸のC型機、“E”になれば四動軸のD型機です。
この機関車、一目で判る通りその昔につぼみ堂模型店が10.5mmゲージと16.5mmゲージで販売していた「木曽森林鉄道のボールドウィン(Baldwin)のBタンク」のプロトタイプそのものです。10.5mmゲージと言うのはHOゲージ(1/87)の鉄道模型で3フィートゲージ(のナローゲージ)の車輛を走らせるためのもので、日本におけるナローゲージの鉄道模型の黎明期に多用されていたものです。恐らくはポーター製の7100型(＝弁慶号・義経号)と、こちらのボールドウィン製タンク機が、アメリカ型的な知名度？が高かった双璧でしょう。多分に、鉄道模型が好きだった男の子はこの辺りから外国型への知識が開いて行ったものです。これ以外の米国型で有名な蒸気機関車と言うと、カワイモデルから発売されていた「リオグランデスタイル」を名乗る車輛となります。
なんとなく想像が付きそうですが、「リオグランデスタイル」と言うのはデンバー・アンド・リオ・グランデ鉄道のナローゲージの路線で使用されていた蒸気機関車を16番的に模型化した車輛です。「アメリカ型なのに、HOではなくて“16番”なのか」と言うとまさにその通りで、カワイモデル的な手法に拠る模型化が行われています。カワイモデルはナローゲージの機関車を製品化する際に、スタンダードゲージ的な味付けの車輛にして売り出すので「ナローの機関車なのに、、、」と言う出来上がりになります。有名な日本型Cタンク機の「C155」も普通の私鉄用タンク機のようにして売られていましたが、実はプロトタイプは尾小屋鉄道の762mmゲージの機関車そのものですから。
温根湯(おんねゆ)森林鉄道の車輛も同様ですが、後側は炭庫が妙に高くそびえ立っています。キャブより後の部分はリベット間隔も細かいし、屋根の細工の感じからしても明らかに後天的な改造によってこんな形状になっているようです。大体、ボールドウィンのカタログに写真の載っているタンク機で、キャブの後に炭庫のある車輛で、こんなに背が高くて屋根まで届くようになっている車輛は皆無です。見慣れてしまうと、これはこれで愛嬌があって悪くはないですけど。少々黒く潰れ気味に写っているので判りにくいですが、後の妻板には上の方に丸窓が二つ開いています。
置戸森林鉄道のボールドウィン製三号機の後部妻板。2008年(平成20年)10月、林野庁林業機械化センター(群馬県沼田市)にて撮影。
上の写真の車輛(の動輪)は、置戸森林鉄道のボールドウィン製三号機。2008年(平成20年)10月、林野庁林業機械化センター(群馬県沼田市)にて撮影。Baldwin manufacutured class 6-10 1/3C rear tank steam locomotive of Oketo Shinrin Tetsudo(Shinrin Tetsudo means logging railroad) of, Hokkaido, Japan.
置戸森林鉄道の車輛が保存されている林野庁林業機械化センター(https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikai/senta_ni_tuite.html)はあくまでも研修施設です。写真撮影などの、趣味活動「だけ」を目的とした訪問は遠慮されますように。