木曽森林鉄道
ボールドウィン製の蒸気機関車(リアータンク機)はこちらに記述しています。
農水省の外局である林野庁の出先機関として営林局があってその傘下に営林署がある、その営林署が管理している鉄道が森林鉄道である、とまぁ、日本ではこのように定義してもいいんじゃないかと思います。建設する場所が場所だけに、多くの場合はナローゲージとなるのも当然の帰結であると言えますな。林野庁の管理する森林は原則として国有林なのでしょうから、林野庁所管のこれらの森林鉄道も国有鉄道的な性格を持つものと考えても良いと思います。国有林で伐採した材木を運ぶことが目的の鉄道なんでしょう。いずれにしても私自身は実際に営業運転していた実物を見た経験はありませんので、保存車輛の写真のみをご覧いただくこととなります。
木曽森林鉄道は日本の森林鉄道の代名詞的存在ですが、林野庁長野営林局管内の国有林(要するに木曽谷の国有林)で伐採された材木を運ぶための鉄道の総称(通称？)です。営林局管内には十か所近くの営林署が在り、それぞれの営林署が森林鉄道を持っているのでそれらの鉄道の総称、と言うことです。従って、個々の路線は木曽森林鉄道＊＊支線、と言うことではなくて、それぞれが＊＊森林鉄道と名乗っています。中央西線沿いに北側は奈良井駅(塩尻駅から名古屋方へ五駅目)、南側は落合川駅(中津川駅の塩尻方の隣駅)まで、毛細血管のように張り巡らされた鉄道の総称が「木曽森林鉄道」です。
これらの森林鉄道の中でも、一番有名な鉄道は中央西線の上松駅を起点とする王滝(おうたき)森林鉄道・小川森林鉄道ではないかと思います。別コンテンツですが、赤沢森林鉄道も前述の小川森林鉄道の一部と言うか南端です。遠山森林鉄道はどうかと言うと、こちらは似たような車輛を使ってはいても別の鉄道系？に属します。王滝森林鉄道・小川森林鉄道・赤沢森林鉄道は、木曽川と支流である王滝川沿いに線路を展開しているのに対し、遠山森林鉄道は天竜川の支流である遠山川沿いに線路を展開しています。
木曽森林鉄道路線図(極大雑把判)。2023年(令和5年)10月作成。
木曽谷の森林は、関ヶ原の合戦以降は尾張藩(尾張徳川家)が独占的に管理しており、秋田杉などと共に極めて秀逸な木材の山地として著名です。尾張は元々が1610年(慶長15年)に徳川家康の九男である徳川義直(とくがわ・よしなお)が入国して47万石余で成立しますが、後に加増を受けて62万石余まで拡大して行きます。財政的には比較的豊かであったようで、その源泉？の一部を木曽谷の森林が担っていたと考えて間違いないでしょう。長野県木曽郡には木曾代官所・木曾材木奉行所を置き、岐阜県加茂郡には錦織川並材木奉行所・牧野川並材木奉行所を置き、筏に組んで熱田湊に在った尾張藩の貯木場まで輸送します。鉄道が無い時代の話なので木曽川を利用しての水運ですが、此処での川並衆がやっていた作業が木曽森林鉄道の遠縁の先祖と言えそうです。明治以降も国有林として大規模に管理されており、その結果として森林鉄道の方も大規模なものに発展していったと言うことのようです。
ホイットコム製ガソリン機関車七号
Nov 1, 2008.
Whitcomb made gasoline engine 4 tonner 4 wheel locomotive at Kiso Logging Railway.
木曽森林鉄道のガソリン機関車七号、、、ホイットコム製のガソリン機関車です。元来、ホイットコムは小型機関車、産業用機関車専業のメーカーで、一番大型の機関車でもEMDのSW級程度の大きさでしかないようです。SW級と言っても新しいものは1500馬力もあるような(森林鉄道用としては)巨大な機関車ですが、ホイットコムの車輛の場合は1000馬力もあれば御の字のようです。精々100トン級程度まででしょうか。大雑把に言ってしまえばナローゲージ的な車輛ばかりと言うことになります。
この機関車は「MO」と言うメーカー型番を持つ4トンガソリン機関車で、日本国内に輸入された内燃機関車としては比較的初期のものの一つです。1926年(大正15年)だったかの購入です。大昔の写真を見ると窓枠は嵌っていないように見えるんですが、もしかしたら開放キャブだったものが後天的に改造されたのではないかと思います。この写真の状態では、恐らくは木製と思われる窓枠が嵌められていて、この種の機関車にありがちな引き違い窓枠です。
上の写真の車輛は木曽森林鉄道のホイットコム製ガソリン機関車七号機。2008年(平成20年)10月、林野庁林業機械化センター(群馬県沼田市)にて撮影。
この写真の車輛は、群馬県沼田市に在る林野庁林業機械化センターに静態保存されていた機関車の傷みが目立ち始めていたために、「よみがえれボールドウィン実行委員会」さんの方々の努力で整備されたものです。
サカイ製ディーゼル機関車122号
Dec 1, 2025.
木曽森林鉄道C4型はサカイ製のディーゼル機関車で、昭和30年代に十輛ほどが製造された10t機です。流行に乗ったらしく湘南顔・二枚窓になっているL型キャブのエンドキャブ機です。恐らくは木曽森林鉄道のディーゼル機関車の中では一番有名で、最新の機関車だと思われます。時期的な問題もあり、この機関車よりも新しい車輛が居たとすれば、その車輛は恐らく何処か違う営林署から移籍して来た車輛の可能性が高いです。
上の写真の車輛は木曽森林鉄道のサカイ製ディーゼル機関車C4型122号。この車輛を「キャブフォワード」と表現する人がいますが、その表現は間違っています。「キャブフォワード」と言うのは、通常は機関車本体と炭水車(テンダ)の中間に挟まった位置に在る蒸気機関車のキャブが機関車の煙室側(テンダとは反対側)に来ている事を示す言葉であって、この車輛とは全く無関係です。この車輛はあくまでも「エンドキャブ」であって、キャブフォワードなどではありません。2010年(平成22年)9月、赤沢森林鉄道の記念館(長野県木曽郡上松町)にて撮影。
上の写真の車輛は木曽森林鉄道のサカイ製ディーゼル機関車C4型122号。真横から、と言うかホンのちょっと後ろ側から撮影してみました。樽型歪みが若干残ってしまっていますけど、、、。撮影に使ったのは
キヤノンのミラーレスカメラ(EOS M6mk2)＋
キヤノンのEF-Mマウントの広角ズームレンズ(11mm-22mm)＋
ケンコーのフロントコンバージョンレンズ(LD-055W)
と言う組み合わせです。これでほぼ魚眼レンズに匹敵する画角が得られて、魚眼レンズとは異なり丸く画像が歪む事は著しく少ないと言う利点があります。「一切歪まない」と言う事では無くて「こちらの組み合わせの方が程度は、、、」と言う事でしかありませんけど。こちらの湘南顔と反対側のボンネット先端は丸妻的な形状になっています。2025年(令和7年)10月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。
サカイ製ディーゼル機関車C4型122号の軸受け部、砂型鋳物の肌が見事です。半艶消しの黒に塗装されている辺り、この車輛の保守をやっている方はかなり「粋風流(いき・ふうりゅう)」をお考えになっていらっしゃるような。2025年(令和7年)10月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。
サカイ製ディーゼル機関車136号
Oct 1, 2015.
木曽森林鉄道136号機はサカイ製の二軸ボギーのディーゼル機関車で、説明板に拠れば北海道の森林鉄道から移籍してきたようです。流石にかなり巨大で立派な機関車です。
上の写真の車輛は木曽森林鉄道のサカイ製ディーゼル機関車136号。2010年(平成22年)9月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。
上の写真は木曽森林鉄道のサカイ製ディーゼル機関車136号の履いている台車。2010年(平成22年)9月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。ちょっと構造が判然としませんが、板台枠で外側イコライザ付きのようです。
協三工業製ディーゼル機関車141号
Dec 1, 2025.
木曾森林鉄道141号機は1956年(昭和31年)に福島県に在る協三工業で製造されたディーゼル機関車で、「こまどり」号、「みやま」号、「みどり」号などの牽引に使用されていた車輛です。白黒写真ではツートーンに塗られた写真が多いようですが、復元の段階で下地に出てくる色から判断して、ご覧のような目の覚めるような青い色に再塗装されています。
上の写真の車輛は木曽森林鉄道の協三工業製ディーゼル機関車141号機。車輛のレタリングは「43」になっていますが、途中で改番されたのでしょうか？。2008年(平成20年)10月、林野庁林業機械化センター(群馬県沼田市)にて撮影。
上の写真の車輛は木曽森林鉄道の協三工業製ディーゼル機関車141号機。車輛のレタリングは「43」になっていますが、途中で改番されたのでしょうか？。2008年(平成20年)10月、林野庁林業機械化センター(群馬県沼田市)にて撮影。
運材車
Dec 17, 2005.
Disconnect log car of Kiso Logging Railway.
「運材車」と言うのは、所謂「ディスコネクト・ロッグカー」です。ディスコネクト構造であるからには、最低限二輛一組で保存しなければ全く無意味ですが、ちゃんと二輛セットで保存されています。習志野市はその辺りのことはちゃんと理解した上で保存されているようで、森林鉄道の運営とは全く無縁の地方自治体の保存車輛としては立派な見識です。機関車寄りの車輛が七号車、B型客車寄りの車輛が六号車です。要するに、この場所では機関車GB4＋運材台車七号＋運材台車六号＋B型客車四号、と言う編成で保存されています。
空荷の運材台車なので、当然乍ら朝顔形連結器の緩衝器の部分が丸見えです。此処まで観察し易い朝顔形連結器と言うものの、交通博物館や青梅鉄道公園では見た記憶がありません。史料的価値は極めて大きいと言えます。ブレーキハンドルの支柱は、車輛の片側にだけ取り付けてあります。当然乍ら二輛を連結する場合には、この支柱は外側に来るようにしなければなりません。想像ですが、偶数車と奇数車で、ブレーキハンドルの支柱を取り付ける位置を違えてあるのではないかと思います。
上の写真の車輛は木曾森林鉄道のディスコネクト・ロッグカー六号車。2005年(平成17年)12月、藤崎森林公園(千葉県習志野市)にて撮影。
上の写真の車輛は木曾森林鉄道のディスコネクト・ロッグカー七号車。2005年(平成17年)12月、藤崎森林公園(千葉県習志野市)にて撮影。
上の写真の車輛は木曽森林鉄道のディスコネクト・ロッグカー六号車。2008年(平成20年)2月、藤崎森林公園(千葉県習志野市)にて撮影。
ナベトロ
Oct 1, 2015.
1.7t積の小さなナベトロです。積載量の数字が半端ですが、比重を勘案するとちょうど1リューベ積みと言うことですから数字的にはキリが良いと言うことです。この辺りは車体標記(ナベの右上に書いてある標記)をそのまま受け売りにしていますが、序でに書くとナベの左側に「上運」とありますから、恐らくは上松運輸事務所とか何とか、その種の部署の所属なんだとは思います。
木曽森林鉄道のナベトロ六号車？。2010年(平成22年)9月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。こちらから見るとナベを転倒する仕掛けが全て見えていますが、手動で転倒させます。要するに軽自動車のダンプカー三台分なんですが、これを一人で転倒させることが出来るんでしょうか？。
木曽森林鉄道のナベトロ。2010年(平成22年)9月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。上の写真の六号車の隣に連結されている車輛です。あいにく車番は不明です。不鮮明ですがナベの右側に「1 7」と言う数字が見えますから、この車輛も六号車と全くの同型車の色違いと言うことなんだと思います。
タンク車
Oct 1, 2015.
木曽森林鉄道にもタンク車はあるのですが、扁平型のタンク体を車輛と、普通の円筒形のタンク体を持つ車輛があります。扁平タンク体の車輛は、北海道の植民軌道が持っている牛乳用タンク車のような雰囲気の車輛です。
上の写真の車輛は木曽森林鉄道のタンク車。2010年(平成22年)9月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。赤沢森林鉄道の保存線路？の終点近くの側線のような場所に留置されている車輛です。運材台車の上にタンク体を架装したような車輛です。保存列車？に乗車している途中で留置線に気が付いて慌てて撮影したので、残念ながら少々ぶれてしまいました。
上の写真の車輛は木曽森林鉄道のタンク車。2010年(平成22年)9月、赤沢森林鉄道(長野県木曽郡上松町)にて撮影。こちらの車輛は木造の下周りにタンク体が架装されています。C型客車の下周りを転用したような木製の台枠です。